西村健太個展「Re」展

西村健太個展「Re」展


会期:2012年7月27日(金)28日(土)29日(日) 13:00~20:00
オープニングレセプション:27日(金) 18:00~20:00
イベント:29日(日)20:00より近くの公園にて夏の風物詩である花火やスイカ割り、水風船合戦を開催予定
会場:素人の乱12号店
協力:天才ハイスクール!!!!

 この度、高円寺にあります素人の乱12号店「ナオ ナカムラ」では、西村健太個展「Re」を開催いたします。

 西村健太は1988年生まれ。東京デザイナー学院を卒業後、2011年美学校で現代美術の講座を受講しました。西村の「We Always Know(私たちは知っている)」と掲げるテーマには、人生のすべてにおいて「はじめから、こうなることはわかっていた」というメッセージがこめられています。そんな、まるで神目線のテーマからなる西村の作品は、どこかダミアン・ハーストを思わせます。

 映像作品「MOON」は、自身の精子の死にゆく様子を顕微鏡を通して撮影し、月の満ち欠けと無駄に消耗されていく精子の儚さを重ね合わせました。行き場のない無益な数億個の精子は、年間約3万人の自殺者や、年間約30万人の望まない妊娠や中絶、また月の満ち欠けは女性の月経周期を想起させます。死に対して軽率になっている現代社会を反映しているかのようです。しかし、3月11日の大津波により犠牲となった約2万人の尊い命についても同時に深く考えさせられます。

 スイスの現代美術家であるウルス・フィッシャーは、16世紀の彫刻家ジャンボローニャ「サビニの女たちの略奪」のレプリカや、友人の等身大彫刻をいずれも蝋で制作し、ひとつの巨大蝋燭として時間とともに溶けていく作品を発表しています。また、日本の現代美術家・宮永愛子氏による、日用品をナフタリンでかたどったオブジェや、塩を使ったインスタレーション、八木良太氏の氷でできたレコード「VINYL」など、これまでも消える彫刻の数々は私たちに存在の儚さを気付かせてきました。
 西村が挑戦する頭蓋骨などをモチーフにした溶けていく彫刻「We Always Know」は、ほのかな香りを残して消えていく入浴剤の“バブ”と同じ方法で制作された作品です。幼いころから家庭にはバブが常備してあり、西村はそれを削ったり溶かしたりして遊んでいたといいます。母親は、息つくところのないストレス社会の中で、癒しやリラックス効果を求めバブを購入してきました。お風呂という場は、社会人が個人へと還るつかぬまの時間です。「死ぬときはひとり」とよく言われます。命にバブの儚さと香りを重ね合わせるという発想は、そんな宿命的な人間の孤独を浮き彫りにしつつも、死へのアイロニーともいえよう現代的な目線を感じさせます。
展覧会開催初日には美しく模られた頭蓋骨も、終了時には原形すら留めませんが、ほのかな香りと儚さを残すでしょう。現代社会に生きる個人の再生・消滅を、視覚と嗅覚で体験していただければと思います。

 本展覧会では、新作であるインスタレーション「We Always Know」を中心に、ディズニーキャラクターのぬりえに裁判傍聴を記録した裁判ドローイング「“Its a small world”」や、金箔をあしらったカーペットクリーナー「Keep Clean」など過去の作品も併せて展示する予定です。
西村の持ち味であるクールでセンスフルな反面、哀愁漂う作品の集う初個展をこの機会にどうぞご覧ください。

また、29日のクロージングパーティでは、近くの公園にて夏の風物詩である花火やスイカ割り、水風船合戦を開催します。ぜひ浴衣でお越しください。



【artscape 2012年09月01日号(artscapeレビュー/プレビュー)】西村健太 個展 Re|福住廉